2016年3月20日日曜日

何度も確認したい週刊文春の水素水の誌上濃度実験!マイナス水素イオンにはほとんど水素は入っていません。


水素水論争に最終結論! 誌上実験でわかった「本物」と「偽物」
夢のアンチエイジング商品

驚異的なアンチエイジング効果で美容業界から医療現場まで大注目の水素水。だが、水素が無色透明・無味無臭であるのをいいことに、本物のフリをして偽物が跋扈。中には、まるで水素が検出されなかった商品も。知られざる真実を浮き彫りにした業界震憾の誌上実験!

 「私たちの研究会は、マイナス水素イオン、プラズマ水素、活性水素、水素吸蔵サンゴといった"非科学的な水素"とは、まったく異なるものです。ペットボトルに入った水素水にも、水素は入っていません!」
 2月9日、東京都品川区で開催された「第三回分子状水素医学シンポジウム」。会の冒頭、同シンポジウムの太田成男会長(日本医科大学大学院教授・加齢科学系専攻細胞生物学分野)はこう言い放ったのだった。
 美肌、メタボからセックスまで"夢のアンチエイジング商品"として注目の水素水。2007年、太田教授らの研究グループの論文が米国の医学雑誌『Nature Medicine』に掲載されたことがきっかけで、その医学的効果が知られるようになった。今回のシンポジウムでも名古屋大学大学院の大野欽司教授が、「9種類の人間の病態において、水素の疾患制御効果が報告された」と講演したように、医療現場においても様々な疾患への活用が研究されている。
 「とりわけ糖尿病予備軍とも言われる耐糖能異常では血糖値の改善が見られました。ガンの放射線治療の副作用である痛みの軽減や、関節リウマチによる炎症の軽減についても、特筆すべき効果が報告されています」(シンポジウムに出席した医療関係者)
 小誌が昨年報じた通り、静岡県の西島病院では、脳梗塞の患者に水素ガスを使い、病変に著しい改善が見られた。順天堂大学では、パーキンソン病患者に水素水を毎日一リットル、一年間飲んでもらったところ、統計学上有意といえる差が出たという。
 「まだラットによる動物実験の段階ですが、認知症や動脈硬化、歯周病、肥満などにも一定の効果があった。一部の男性から『勃起するようになった』という声も出ていますが、これは動脈硬化への効果によるものだと思われます。また、太田先生が自らの額のシミに水素入りクリームを塗り続けたところシミが消えたそうですが、これは水素がメラニンを分解するため。肌のシミやくすみにも効果が期待できるのです」(同前)
 だが、手放しで喜べない現実もある。"偽物"の水素商品が横行しているのだ。
 太田教授が説明する。「私たちが医学的利用を研究している水素は、水素ガスとして知られる分子状の水素(H2)です。空気中にも僅かですが存在しています。あくまで、この分子状水素が、体内の活性酸素、なかでも一番の悪玉活性酸素である『ヒドロキシルラジカル』に反応し、体内で化学変化を起こすことで水に変化するのです。
 ところが、この分子状水素が入っていない水や、発生しないサプリなどが、堂々と"水素商品"として販売されています。だからこそ、我々はそういったメーカーや研究者とは、一線を画す必要があるのです」
 小誌が昨秋、はじめて水素水を取り上げて以来、編集部には問合せが殺到した。ほとんどの質問は、「どれを買えばいいのか」というものだったが、
「インチキと言っても差し支えない商品もある」
というのが当時からの太田教授の変わらぬ見解。そこで今回小誌は「水素水」「水素サプリメント」について、その水素濃度を計測するなど独自に検証。「本物」と「偽物」の判定を試みた。
 まずは、「水素水」。
 測定するサンプルはあくまで小誌が選び、大手通販サイトやメーカーのホームページで購入。どの商品も同時期に発注し、商品が揃ってから、一斉に計測した。水素水は開封して時間が経つと水素が抜けてしまうため、それぞれ開封直後に「溶存水素濃度判定試薬」(MiZ株式会社)を使い、水素濃度を計測した。
 その結果が上の一覧表。公平を期するため、太田教授の研究室に同じ商品を持ち込み、ユニセンス社製のニードル型溶存水素測定器で計測してもらった。
 だが、結論から言えば、小誌と太田教授の計測値に大きな違いはなく、非常にわかりやすい結果が出た。
 ひとつの目安として「飽和水素水」、つまり何の圧力もかかっていない状態で、最も高い濃度の水素水の数値が1.6ppm。通常ではこれが最も高い水素濃度である(ppmとはperts per millionの略。百万分のいくらであるかという割合を示す単位で1ppm=0.0001%)。



9つの水素水の中で、濃度が高かったのは、アルミパウチに封入された「水素たっぷりのおいしい水」、「高濃度ナノ水素水スパシア」、「ナノ水素水キヨラビ」の3つ。これらには太田教授も太鼓判を押す。
 「アルミパウチの容器が一番水素が抜けにくい。どれも1.0ppm前後の高い数値を検出した。これだけ入っていれば納得です」
 アルミ缶タイプのものは、商品により違いが出た。
「水素水『悠久の恵』」はなかなかの好結果だったが、「還元性水素水」は高いとは言い難い。「カラダの中からキレイに水素水」は0.1ppmと、水素水と呼ぶには微妙なほど低かった。
 「アルミ缶だとどうしても缶内に空気が残っているので水素が抜けてしまう。分子状水素医学シンポジウムでは、0.08ppm以下のものは水素水として認めていませんが、これは本当に甘い基準で、最低限ギリギリの数値です」(同前)
 ギリギリの結果判定にメーカーはどう応えるのか。
 「弊社測定方法での水素含有量は、お問合せの数値より高い濃度で計測されております」(中京医薬品)
 そして、まったく水素を検出できなかったのが、ペットボトルタイプ。「ナノバブル水素水」と「天然水素水VanaH」である。
 「シンポジウムでもペットボトルはダメだと断言しましたが、その通りの結果でした。出荷時に水素が入っていたとしても、ペットボトルの素材よりも水素分子のほうが小さいため、水素は時間の経過とともに抜け出てしまう。これらは水素水とは言えない」(太田教授)
 これらのメーカーは小誌の取材にこう答えた。
 「当社の水素はナノバブル水素ですから、ペットボトルでも抜けないはずです」(オムコ東日本)
 「長年に亘り『天然水素』に関して某大学に研究を依頼しており、その研究結果が学術誌に発表されております」(VanaH)
 もうひとつの「水素水5.0」については説明が必要だろう。この商品は医療現場でも使用されているいわば"プロ仕様"のもの。ユーザー自身が水素水を作るタイプだ。
 「水素発生素材を試験管のような専用カプセルに入れ、少量の水をたらして水素ガスを発生させます。そのカプセルに蓋をして、水が入った炭酸飲料用のペットボトルの容器に入れて密封すると、水素ガスが水に溶け込み、水素水になります」(「水素水5.0」を使っている病院スタッフ)
 水素ガスの発生は、セットしてから約10分前後で終わる。ペットボトルを30秒ほど振ることで圧力をかけると、さらによく溶け5.0ppm前後の「超飽和水素水」となる。

水素水一滴にも満たないサプリ
 次に「水素サプリメント」。サプリメントは液体ではないため、計測が難しい。こちらは太田教授に計測を依頼する形をとった。
 「まず水素ガス測定用アルミニウム袋に、サプリメントのカプセルを四ケ入れて密封します。中の空気を一度抜いてから、30mlの防腐剤入りの水を注入して密封。その状態のまま、37℃の状態で48時間保存。さらに60mlの空気を入れて2時間揺すってから、その中から20mlの空気相を採取して、ガスクロマトグラフィーを使い水素濃度を計測しました」(太田教授)
 その結果、判明したのは驚きの事実だった。「アクティブハイドライド」、「おはよう水素」、「爽快水素プレミアム」、「POWER SUISO」からはほとんど水素が発生していなかったのである。
 表では一見サプリから多くの水素が発生したように見える。だが気体と液体ではppmの意味が異なるため、サプリから発生した水素ガスの量は水素水の11,000分の1。あまりに微量のため、同量の水素ガスを溶かして作った飽和水素水は左列のようなμl(マイクロリットル)という単位となる。
 「この結果を分りやすく言うと、これら4つのサプリメントは、1カプセルで市販の水素水の一滴にも満たない分子状水素しか出ていないことになります。インターネットで『おはよう水素』のホームページを見ると、『3~5ppm前後の水素ガスが長時間に渡り発生している』と主張しています。たしかに今回の実験でも、それに近い値が出ましたが、この程度のほんのわずかな水素発生量で、なにか体に効果があるとは到底考えられない」(同前)
 これらのサプリには、「マイナス水素イオン」「食べるマイナス水素イオン食品」といった表記があり、「おはよう水素」「爽快水素プレミアム」「POWER SUISO」の三つには「特許第4404657号」と書かれている。が、これらの表記は何を示すのか。

"非科学的水素"の最たるもの
 サプリメントの特許に詳しい、ファーイースト国際特許事務所所長の平野泰弘弁理士はこう話す。
 「これはあくまで『食べるマイナス水素イオン』という名前の食品、もしくはサプリメント原料の製造方法と製造手順について特許が認められているだけ。マイナス水素イオンが発生するとか、さらに直接体に何らかの効能があるといったことについての特許ではありません。そもそも、特許申請にはマイナス水素イオンの直接的な実在を示す実験方法、測定方法もなんら記載されていないのです」
 そもそも、マイナス水素イオンやプラズマ水素とは何なのか。東京大学大学院の三好明准教授が解説する。
 「マイナス水素イオンは人工的につくられた真空環境でしか存在しません。我々が生活している地上や水の中では、存在しているという科学的な理由が見当たらない。
 プラズマ水素、活性水素は、そもそも学術用語にありません。仮にこれらを水素分子ではなく、水素原子だと考えた場合、少なくとも1,000度以上の高温状態、たとえば、ガスコンロやライターの炎の中では存在する。常温でも、実験室などでアンモニアの気体や硫化水素に紫外光の193nmという波長のレーザー光をあてれば、水素原子を発生させることは出来ます。
 別の言い方をすれば、簡単に作り出せるものではないということです」
 これぞ"非科学的水素"の最たるものである。
 開発者はどう応えるのか。「食べるマイナス水素イオン食品」の開発者であり、製造元である株式会社TAANEの及川胤昭会長に、文書にて取材を申し込んだところ、文書返答はしないとのこと。ただ、電話ではこう語った。
 「私は日本・中国マイナス水素イオン学術集会でも研究発表を行なっている。理解できない人が論ずるなと言いたい。特許も、たくさん持っています」
 説明は要領を得ないものだった。
 一方、サプリで唯一"合格点"を叩き出した「水の素」は飽和水素水1L分に近い量がしっかり出ていることが判明。販売元である日本機能性医学研究所の斎藤糧三氏に話を聞いた。
 「パーキンソン病、糖尿病、生活習慣病の患者さんらに、西麻布の東京健康クリニックで処方しております。アンチエイジングの効果も期待しております」
 今回、取り上げた商品は数ある中の一部に過ぎないが、水素は目に見えないだけに偽物には要注意だ。

週刊文春 2013年2月28日号


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